生活習慣病とは
偏った食事、運動不足、喫煙、過度の飲酒、過度のストレスなど、好ましくない習慣や環境が積み重なって発症につながる慢性疾患です。代表的な生活習慣病として、糖尿病、高血圧、脂質異常症(高脂血症)、高尿酸血症(痛風)などがあります。これらは動脈硬化を進めてしまうことがわかっています。
これらの病気は自覚症状がほとんどないため、気づかないうちに動脈硬化が進行し、脳や心臓、血管などにダメージを与えていきます。その結果、ある日突然狭心症や心筋梗塞、脳卒中など、命に関わる深刻な疾患を引き起こすことがあります。
高血圧、脂質異常症などと診断されたら、たとえ症状がなくても、食事や運動など生活習慣を見直し、また必要に応じて薬の内服を行うことで動脈硬化を進行させないことが重要です。治療に前向きに取り組むことが、これらの深刻な疾患の予防につながります。
当院では生活習慣病に対する
質の高い疾病管理を行っています。
血液検査は、血液疾患だけでなくがんや生活習慣病、腎機能、肝機能など内臓の健康状態、CRP定量(炎症反応)、電解質など、身体の複数の健康状態を確認するための重要な検査手段です。
当院では院内に血液検査機器を設置し、検査結果を素早く取得できるようにしています。検査結果は多くが当日のうちに確認可能であり、これにより、質の高い疾病管理、治療を実現しています。
高血圧
高血圧とは、血圧が正常範囲を超えて高く維持されている状態です。収縮期血圧(心臓が血液を送り出すときの最高血圧)と拡張期血圧(心臓が拡張して血液を受け入れるときの最低血圧)が通常の範囲を超えると、動脈や心臓に過度な負担がかかり、様々な健康問題を引き起こすリスクが高まります。
高血圧は無症状で進行することが多く、放置すると動脈硬化や心血管疾患、脳卒中などの合併症リスクが増加します。生活習慣の乱れ、遺伝、高塩分の摂取などが要因となります。予防としては、バランスのとれた食事、適度な運動、ストレスの管理が重要です。診断は血圧測定により行い、必要に応じて塩分制限などの生活習慣改善や薬物療法が行われます。早期発見と総合的なアプローチにより、高血圧をコントロールすることが重要です。
脂質異常症
脂質異常症は、血液中の「悪玉」のLDLコレステロールや中性脂肪が必要以上に増えるか、または「善玉」のHDLコレステロールが減った状態です。コレステロールは体内に存在する脂質の一つで、細胞膜や胆汁酸、副腎皮質ホルモンの材料になるなど、重要な役割を担っています。しかしながら、LDLコレステロールが血中に増えすぎると血管内に蓄積し、動脈硬化を進行させる要因となるため「悪玉」と呼ばれています。一方HDLコレステロールは体内で使い切れずに余ったコレステロールを集めて肝臓に戻す働きがあり、動脈硬化のリスクを低下させることから「善玉」と呼ばれます。中性脂肪はそれ自体では動脈硬化の直接の原因にはなりませんが、増えすぎるとLDLコレステロールが増え、HDLコレステロールが減りやすくなることが知られており、動脈硬化を促進します。
脂質異常症は主に生活習慣に起因し、バランスの取れた食事や適度な運動、禁煙などの健康習慣が重要です。女性は閉経後にホルモンバランスの変化が影響することがあるため、特に注意が必要です。医師の指導を受けながら、適切な生活習慣の改善が重要ですが、生活習慣で改善が難しい場合は薬物療法を行います。
糖尿病
糖尿病はインスリンの分泌が不足している、またはインスリンが正常に働かないために血糖値が異常に高くなる病気です。糖尿病はいくつかのタイプに分類されますが、日本人で圧倒的に多く、生活習慣病の一つとされているのは2型糖尿病です。この2型糖尿病の発症には遺伝的な要因に加え、食べ過ぎ、運動不足、肥満、ストレスといった生活習慣の乱れが関係しています。
血糖値が高い状態が慢性的に続くと、血管が傷つけられ、網膜症や腎障害、神経障害といった糖尿病の三大合併症のほか、脳梗塞や心筋梗塞などを引き起こすリスクを飛躍的に高めます。そのため糖尿病と診断された場合は、血糖値を適切にコントロールすることが重要です。
血糖値や1~2か月前からの血糖値の推移が分かるHbA1c(ヘモグロビンエー・ワン・シー)などを外来で定期的にモニタリングし、食事療法、運動療法、薬物療法を適切に行います。
高尿酸血症・痛風
高尿酸血症は血液中の尿酸値が高くなっている状態のことです。そのうち関節内に尿酸の結晶ができ、激しい痛みを伴うようになったものを痛風と呼びます(高尿酸血症のすべてが痛風を引き起こすわけではありません)。
高尿酸血症の原因には「尿酸が作られ過ぎているパターン」、「尿酸の排泄がうまくいっていないパターン」、またはその両方があります。高尿酸血症を起こすのはほとんどが男性ですが、これは女性ホルモンの一つであるエストロゲンに尿酸の排泄を促進する作用があるためです。
「尿酸が作られ過ぎているパターン」の代表的なものとしてプリン体を多く含む食品(ビール、レバー、干物など)の過剰摂取があります。「尿酸の排泄がうまくいっていないパターン」としては腎機能の低下や利尿剤の内服などがあげられます。
高尿酸血症の患者さんの中には、糖尿病や脂質異常症、高血圧などを合併している方が多くみられます。また詳しいメカニズムは分かっていませんが、高尿酸血症自体が脳卒中や心臓病を引き起こすリスクであるとも言われています。そのため高尿酸血症を指摘された方は、これまで痛風発作を起こしたことがなくても、しっかりと尿酸値をコントロールすることが重要です。